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「山登りのススメ」序章:何故山に登るか?
「何故山に登るか?」

このシンプルな問い掛けに「そこに山があるからだ」と答えたのは、エベレストの人類初登頂を目指し、消息を絶ったジョージ・マロリーだ。
※ジョージ・マロリーとアンドリュー・アーヴィンが初登頂という説もあるが、私はこの可能性は低いと思っている。エベレストの初登頂の公式記録はエドモンド・ヒラリー、テンジン・ノルゲイのパーティである。

「そこに山があるからだ」は所謂ひとつの名言として世間で認識されることが多いが、一人の登山家(登山好き?)としてこの言葉はあまりにも在り来たりの表現であり、また挑戦的であり、それ故名言という事も言えるのかもしれないが、私にとってこの問いに対する答えは「下るため」である。

山に登るという行為に伴う危険(≒事故)は、標高0mの世界で日常を過ごす場合の危険と比べその頻度は圧倒的に多い。
ある機関の調査によると、登山者が山で事故に遭遇する確率は、交通事故発生率の6倍にも及ぶという。

それは、即ち登山における山頂までの道のりが、他のどんな道のりと比べて困難であり、辛いものであるという事を表している。
だからこそ、この苦しい道のりを登り切り、さらに下って来た時の感動は、日常生活におけるどんな感動にも勝る。
つまり「下る」事が登山の終着点であり、何にも代え難い感動の起点でもあるのだ。

「そこに山があるからだ」

私にとってこのマロリーの言葉は、登る行為そのものが目的であり、下るという意識が欠けている表現に思えてならない。
マロリーが、エベレストから帰って来られなかった理由は、今も様々な憶測を以て調査が行われているが、本当の理由は技術の欠如でもなく、気象の悪条件でもなく、この言葉が暗示する軽率さにあるのではないのだろうか?

私は、下ってくることを目的とした安全な登山を日々楽しんでいる。
その登山の楽しみを綴り、皆さんにその喜びを伝えたいと思う。
そして皆さんがもっと山に来てくれるように、その喜びを共有したいと思う。

081022.jpg奥穂高岳から前穂高岳を望む。

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